「━━━━んで?我らが王はその領土宣言を認めて自分はサッサと東方領に向かったと?」
「然り……しかし、バルザーの不出の魔剣か!!王からの釘刺しが無ければ私の手に収めたかった物をッ!!」
「いやあ、ダラナギさんならともかく、エルドラドさんが往ったらシャレにならないじゃないですか……その場合、多分ボクに調停役回ってきますよね……?シュリさん!!そうなったら助けてくれますよね!?」
「……大敵も無く対立を収めるのは軟弱。我等が彼奴と相対するならば、どちらかを淘汰する時だが。それでも良ければな。」
「はいダメー!?」
「━━━━ハッ!!まどろこっしい!!そもそも人族の反乱軍なんざ俺等が出張って全部潰しちまえばよかったんだよ!!」
━━━━常勝不敗、一騎当千、万夫不倒。
その名を欲しいままにするパルティニア・エンデ最強の五大将軍。
彼等の会合は、凡その場合はこのように相容れぬ。
『━━━━残念ながら、そうも言っていられないのが実情です。四方を別ったこの国ですら、公と将の数が足りていないのですから』
相容れぬそれらを取りまとめるのは、特殊な通話のピアスを通じて会議に参画する王妃の声。
『北方戦線……カナンが此方への侵攻計画を進めているのは間違いなく。そして、それに呼応するように南東ではイルマサーダが活発化しています。南西のケルシガル―も隙あらば守りの剣による戦線の押上げを進めるでしょう』
『貴方方五大将軍はそれらに対する抑止であり、同時にそれらを打ち砕く矛でもある。故に、貴方方に軽々に動かれては困るのです』
「……まぁいいさ。それで?王はこの後南方領に向かう予定だったな?」
『はい。《一気飲み用のカルディアの涙セットを土産に買ってくから首を洗って待って居ろ》との言伝です』
「……フン。じゃあな。俺は屋敷に戻るぞ。」
「……ジェラルドさん、偉く不機嫌でしたね……アグラさん、なんか分かりません?あの不機嫌を喰らってると胃が痛くなるんですけど!?」
「━━━━さてさて。様々な理由は考えられますが……バジリスク特有のアレコレ……と断ずるには些かばかり証拠が足りぬかと。」
「ま、人生長いんですから、時には諦めも肝心ですぞ?ハッハッハ」
「ハッハッハー……じゃなくてェ!!」
(……ジェラルド殿、どうやら以前のお話通り、王への反感が大分溜まっておられるようですな?となれば、計画通りに進めて問題は無かろうですかの)
「あぁそうそう。南方領トリムルティですが、少々厄介な問題が起きておりまして……」
━━━━百年の雌伏を踏み台に、闇に蠢く陰謀が動き出す。
その闇を祓うは、果たして……?