銀翼のヴェクターズ 幕間 「強さの果て」~




 ナグ・ドレドが自室に戻ると、二人の美女が出迎えた。一人はヴィオラ・ル・ガル、もう一人はニコラである。ニコラは兎も角として、ヴィオラの来訪を予想出来ていなかったナグは、部屋の入り口で仰け反った。



「カギはかけておいたはずだが……アンタに言っても仕方ないか」



 アンロック、シースルー、テレポート……カギをかけた程度で、最高峰のウィザードであるヴィオラ相手に意味は無い。とはいえ、彼女は自身のそういった力を使って、他者の領域に踏み込むことは無い人物であるから、意外ではあった。



「私が呼んだの、ナグったら置いていくんだもの。狭い部屋に一人で居るのはもう耐えられないのだわ……」



「ああ、そりゃ悪かったな……」



 『昏き睡蓮を装備していない状態の、自信の素の感覚を忘れないようにしたい』という理由で、黒い短剣は部屋に置きっ放しにされていた。長いこと船の動力室に閉じ込められていたせいで、ニコラは閉所恐怖症気味になり、孤独に弱くなっている。カギのかかった自室に置いておくのは、少し気遣いが足りていなかった。

 如何なる方法でヴィオラを呼んだのか、とナグは一瞬疑問に思ったが、大部分の力を失ったとはいえニコラは竜の魔女と呼ばれた女神だ。竜の姿を基本としているヴィオラを呼び出すのに、そう苦労は無いのだろう。


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