"無慙楽土"ミナディウム

 ルッツォルド砂漠の東側に位置する、ナイトメアである狂王シェリンダム・ダーレスが中心として作られた人族と蛮族の混成国家です。
 魔動機文明時代、デーモンルーラーであるシェリンダムは未だ未開拓であり、アニムスという強大な武力を持つ国家が存在したため手付かずだったこの地域を当時の伴侶であった蛮族と切り開き、共同体を作り上げたのがこの国の始まりとされています。彼らは自由を好みその気質は現在まで受け継がれ、実際この国には"自由であれ"という一つの条文以外に一切の法は存在しません。
 そのためか狂神ラーリスの教えを標榜してはいますが実際にラーリスの神殿は存在せず、神官もいたとしても神の声などに縛られる者も殆どいません。それどころかこの国において、神官職というもの自体が稀な存在です。人族が一剣神の像を打ち壊し、蛮族達が二剣神の教えに対して唾を吐くようなジョークを織り交ぜて酒場で人族と歌うといった有様です。
 この国では穢れのない人族は生まれたときから魔神を封入された物品をお守りとして携帯します。これは自衛の意味が大きいですが、守りの剣を一切持たないこの国で、強大な蛮族達との共存のために戦力差を整える意味合いもあります。 大河を戴き、深い森を切り開いて作られたこの国は肥沃な大地と豊富な水を持ち、その乱雑な気風からは考えられないほど人々の生活は豊かです。
 それ故にか娯楽の概念が大きく発達しており、賭博場や歓楽街だけでなく闘技場や、大道芸人の集まる大通り、魔動機文明時代に作られた娯楽用の魔動機を集めた遊興施設などがあちこちに存在しています。また、様々な種族が混在しているため酒類や香辛料、食材なども豊富で食文化も各種族それぞれの料理が各地で楽しめるなど、享楽に生きるならこれほど住みやすい国もないでしょう。
 一方で他国では非合法になるような薬品の流通も盛んですが、依存性の高いものを流した結果、"薬に縛られることで自由を失った"と国民が激怒、業者を焼き討ちするなどの自浄作用が働く為あまり大ごとにはなりません。
 このように基本的にあちこちで騒動が起こる国です、しかし基本的に住民が各自で解決してしまいます。無論全員が全員強いわけではないことや、そもそも面倒でやりたがらないような者も多い為、問題解決の委託場所として冒険者が存在します。
 ちなみに自己解決が不可能な程の混乱が起これば狂王本人や、彼の親衛隊(実態は愚連隊のようなものです)が直接介入し解決を行います。

人物

"狂王"シェリンダム・ダーレス (ナイトメア/男/年齢不詳)

「ああ、外からの旅人さん? ごめんね!ナンパしてたら怒ったリリィに追われてて……あっ俺? 王様!困ったらいつでもギルドの連絡用窓口へ!お悩み相談ならいつでも受けてるよ!じゃあね!」
 かつて危険な原生生物がひしめき、誰も棲み着くことがなかったシシュエグイ大森林と呼ばれる未開拓地を切り開き、集落を築いた時から君臨し続けるミナディウムの王です。王とされていますが実態は統治などは全く行っておらず、ただこの国を切り開いた最初の住人であり、かつ最も強いということから国民から王と慕われているに過ぎません。高位のデーモンルーラーであり、数多くの魔神を使役し、本来なら暴走するはずの魔神の複数同時使役すら可能であるという噂すらあります。
 性格は基本的に善良ではありますが、極めて享楽的で常に国内を行脚し、面白いものを探し続けています。そのためこの国に王宮は存在せず、彼の妻が船長兼整備士を務める超大型スカイシップ「ロードオブミナディウム」(船の名前は国民の投票で決まりました)が彼の唯一の城と言えるでしょう。 享楽にしか興味が無いように見えますが、実際には人族や蛮族のはぐれ者たちが楽しく過ごせるようにという、かつてから変わらぬ信念を貫く為にあらゆる外的要因を排除する事にそれなりに苦心しているようです。
 しかしみんなが楽しむ為には自分が楽しくなければと言って基本的に自分の楽しいことを優先してしまう気質から妻が度々尻拭いをしては叱られるということを繰り返しています。

"晦冥侠客"リリィ・バーレイ (アレクサンドライトバジリスク/女)

「あんのお馬鹿シェリー!!また船から飛んで逃げたわね!! 面舵いっぱい!追え!!」
 狂王シェリンダムの妻であり超大型スカイシップの船長兼整備主任を務めるのが彼女リリィ・バーレイです。 白銀の長髪に貴族の令嬢を思わせるほどの美貌を持ちますが、常に作業着か簡単な下着とズボンを履いて船の中で怒号を飛ばしながら彼女の愛すべき無軌道親衛隊を指揮しています。
 彼女は高位のマギテックであると同時に拳闘士、あるいは暗殺者としての強さは大陸でも随一と謳われるほどの侠客です。 建国以来からシェリンダムと付き合いがあり、バジリスク本来の寿命はとうに過ぎ去っている程の年月が経っていますが未だ壮健で、よく逃げる夫を追いかけて戦闘を繰り広げている様が国内のあちこちで目撃されます。本人曰く、良い夫婦生活が長生きの秘訣との事ですが、実態は賦活の魔眼を鏡を用いて自らにかける事によって若返りを繰り返しているというのが真相です。
 この件について、かつて若作りと揶揄した者達は皆顔面を痣だらけにされ、愉快なオブジェとなった状態で街の広場に吊るされていた事があるため、間違っても同じ過ちはしてはならないという不文律がミナディウムに存在します。これはあらゆるルールに縛られないミナディウムの住人が唯一守るルールだと冗談半分で語られる事すらあります。
 性格は気っ風のいい姉貴分と言った印象を受けますが、バジリスクらしい悪辣さと自由さを持たないわけではありません。
 夫や民と共に生きるこの土地や船を荒らそうとする者達をあらゆる策略と暴力を用いて徹底的に滅ぼそうとするでしょう。
 余談ですが普段はおくびにも出しませんが夫を溺愛しており、夫の写真や絵を本人に無断で集めるのが趣味だということがシェリンダム以外の国民にとって公然の秘密となっています。

地域・施設

首都「レベリオ・ヴィナリア」

 レベリオ・ヴィナリアはミナディウムの首都であり、直径20kmほどの巨大な奈落を中心に作られた歪な円形都市です。
 街は三層の同心円構造をしており、守りの剣が一切存在しないため外周部ほど魔物の襲撃に遭いやすく、中心部に行くほど奈落に近くなるため危険度が上がります。直径100kmに渡る広大な都市の移動のために、街には路面列車が複雑に張り巡らされています。当初は住民たちによって無計画に運用されていましたが事故は毎日のように起こったため、有志により作られた鉄道ギルドによって現在は運用されています。しかし無計画に住民によって路線が拡張、無登録の車両の運行などがなされているため常に人手が足りていない、というのが現状です。

 最外殻区画は“眩惑街”と呼ばれ、主に冒険者の店や、劇場、酒場、レストラン、カジノ、闘技場、花街などの娯楽施設で構成された区域です。 この街に来た人間はまずこの圧倒的なまでの絢爛さ、そして乱雑さに目が眩むと言われています。性質上争い事は常に絶えず、下手に路地裏に入れば犯罪組織や街に入り込んだ魔物に襲われることもザラです。しかし大通りだけを歩き注意さえしていれば比較的安全で、独自に発達した娯楽や食文化を大いに楽しむことができるでしょう。

 次に中間区画となるのが“叫喚の凪”と呼ばれる場所で、比較的安全であることから人口の6割がこの中間区域に存在しています。 住民のための商業区画も存在しておりお国柄か魔神の封入されたアクセサリーなどが売られていることもあります。
 比較的安全ではありますが住民のおよそ4割が蛮族であるため、やはり喧嘩は絶えません。また魔神の封印失敗による事故も多発するため毎日どこかしらで事件は起きていると言えるでしょう。

 そして奈落に隣接した中心区画“虚現の彼岸”と呼ばれる場所には冒険者ギルドの本部や国の政治中枢であり、国王の乗る超大型スカイシップ“ロードオブミナディウム”の補給拠点にでもある巨大ドライドック“バーミリオン・ケイヴ”が存在します。 議会は主に国王に選ばれた13人の“長”によって運営されます。
 そのどれもが比類なき強者であり、また性格に難のある者ばかりで議会とは名ばかりの集団です。実際にミナディウムという国家には政治という概念が存在せず、議会も世界を乱しかねないような人間を一応国王が抑えておくために存在すると言われています。
 また議会には直属の独自の私兵が存在します。一切の法が存在しないこの国ゆえに、跋扈しやすい災厄をもたらすような存在を封印、あるは破壊するために国王の命で常に大陸中に紛れ込んでいると噂されています。

虚な塵溜

 首都レベリオ・ヴィナリアの中心、“奈落の大虚”の上層南側に存在する大量のゴミが次元の扉から落ち続ける巨大な空間です。
 ゴミや下水が際限なく垂れ流されているため放って置くといずれ街へと溢れ出してしまうと発見された当時危惧されていましたが、そもそも水平方向の空間が歪んでいる為スペースの全貌が不明である事や、周辺に様々なゴミを際限なく食べる生物“ガロスガリム”が住み着いており、それらが分解者の役割を果たしているため問題がないと判明しました。その為か現在ではレベリオ中の地上のゴミ集積場との直通のダストシュートが設けられています。
 ガロスガリムの群れから離れた地点、ゴミが比較的少なく地上に近い地点には、抗争で敗北し落ち延びた者や資材を漁りに来た浮浪者、特殊な生態系の調査をしにきた学者の集団などが寄り集まり小さな街を形成しています。 廃棄孔街、ウーデンブルグと呼ばれるこの場所は独自の文化が形成されており、無謀な学者達がこの場所の生態や奈落の研究をする為にできた“武装学府“ナーカミルを中心とした学問の聖地としても知られています。
その独特の文化から無法の国ミナディウムの中でも比較的安全と言われています、あくまでも比較的ですが。


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