#author("2020-09-29T16:54:07+09:00;1970-01-01T18:00:00+09:00","","")
#author("2020-09-29T16:55:24+09:00","","")
* ある魔神の顛末 [#j56ad2a2]
 崩壊しつつある魔域の中で、聖騎士の姿を模したドッペルゲンガー、シーダは肩を落としていた。~
 ~
「はぁ……魔界に帰るって言ってもどうしましょう……」~
 ~
 高潔な騎士、その精神性までもをコピーしてしまった事で既に魔神としての本分など真っ当に出来るはずもない。さりとて魔域の外に出たところでまともに生活する方法もない、完全に手詰まりであった。~
 崩壊する魔域の中で、諦めて魔界でひっそりと暮らすか……と諦観に染まろうとしていたところ、誰もいないはずの空間に場違いに明るい声が響く。~
 ~
「そこな迷える奇妙な魔神、君にアドバイスを与えよう!」~
 ~
 虚空から滲み出るようにナイトメアの男が現れる。それは先ほどまでフェリアの人形を【テレオペレート・ドール】で勝手に乗っ取り一部始終を覗き見ていたアレクシアであった。無論彼女にそんなことは知る由もなく、ただの突然現れた不審者である。~
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「は?え、はぇ!?誰です!?」~
 ~
「通りすがりのお兄さんだとも、気にしなくていいよ。それより君にいい就職先があるけどどうする?」~
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「はい?」~
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 いきなり現れて就職先の話をしてくる(推定)高位の魔術師、怪しさ抜群であるが特に騙し取られるようなものもない、シーダは話だけは聞いてみることにした。~
「僕の友達の(魔神使いの)王様がさ『真面目でそこそこ強くてなおかつ魔神で裏切らない子いないかな~~~!~
 いる訳ないよね~~~~……………働こ………』という嘆きを常日頃愚痴っているんだけどどう?」~
 ~
「僕の友達の(魔神使いの)王様がさ『真面目でそこそこ強くてなおかつ魔神で裏切らない子いないかな~~~! いる訳ないよね~~~~……………働こ………』という嘆きを常日頃愚痴っているんだけどどう?」~
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「どう……と言われても……?」~
 ~
「具体的には、ちゃんとした国(欺瞞)のお仕事で、ちょっと大変(欺瞞)だけどお給料が出て、休みも取れる(欺瞞)仕事に魔神ということを隠さずに就けるよ」~
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「え、本当ですか!行きます!ちなみにどこの王様ですか?宮仕えってことですよね?」~
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「ん?ミナディウム」~
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 口にされたのは魔神達の間でも有名な混沌を擁する国の名前、そして彼女は気づく、これ詐欺だと。~
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「…………詐欺だ!!?」~
 ~
「いや、嘘は何も言ってないよ。それにほら、もう契約しちゃったし」~
 ~
 彼女はいつのまにか無詠唱で掛けられている【ギアス】に気づく。しかもかなりブラックな就労契約が結ばれている、しかも破ったら死ぬ。~
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「……は?!契約書じゃなくてギアス!?なんで!?」~
 ~
「いや、だって僕召異魔法よくわかんないし。まだ勉強中なんだよね、だからまぁ保険?ということで。じゃ、行こうか」~
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「へ?」~
 ~
 瞬きをした一瞬、視界が切り替わる。それは上空1500m、宇宙に最も近い方舟、最も自由な国をその手にする紅い王の居城。~
 ~
「一名さまご案内~じゃ、僕帰るからよろしくね」~
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「は、え、は?」~
 ~
 残されたのはポツンと方舟の甲板に放り出された女が一人。茫然と立ち尽くしていると、いつのまにか目の前には一人の小柄なバジリスクの女が立っていた。身長160cmほどのそれは肩口で切り揃えられた菫色の髪にタンクトップと上半身を脱いだツナギ姿で一見すると魔動機整備などに携わる作業員のように見えた。~
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「おい、お前」~
 ~
 ぶっきらぼうな口調で女は話しかける。~
 ~
「え?あ、どうも……?」~
 ~
「うちの夫の秘書志望か?」~
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「はい?」~
 ~
「……うちの王様の秘書だ、書類仕事は?」~
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「一応……?あんまり得意じゃないですけど……」~
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「心配するな、文字が読めれば私が叩き込む。あの馬鹿シェリーよりはマシだ」~
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「……あ、夫が王様ってことは……王女さま!?」~
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「やめろ、柄じゃない。この国作ってから一度も王女様なんて呼ばれたことないぞ私は」~
 確かに、機械油に塗れた顔は確かに王女には見えない。本当に王女なの?など色々と疑問はあるがシーダはとりあえず喫緊の問題について質問する。~
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「あの……お給料って……」~
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「月5万G」~
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「月5万」~
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「なんだ?少ないか?仕方あるまい、人格に問題なしと言われているし月8万までなら出してやれるぞ」~
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「月8万」~
「む、不満か?~
 心配するな、ボーナスは含んでいない。各種手当てもつくぞ」~
 ~
「む、不満か? 心配するな、ボーナスは含んでいない。各種手当てもつくぞ」~
 ~
「えっ、魔神ですよ私?」~
 ~
 あまりの好待遇ぶりに困惑する。普通に考えて裏切る可能性がある魔神、しかもドッペルゲンガーにこんな好待遇などあり得ない。~
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「はた迷惑だがお前を連れてきたあの男は人を見る目はある、それにアレのギアスも掛けられているならあのラーミの奴よりマシだ」~
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「はあ……?とりあえず就職という事で……?」~
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「いや、魔神契約書にはサインしてもらう」~
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「あ、そうですよね、忘れてた」~
 ~
「……本当に魔神か?」~
 ~
「なんですよねー悲しいことに……」~
「────悲しいことに、か。~
 なに、心配するな。変わり者などこの国はごまんといる、きっと楽しく生きれるさ、それがこの国だ」~
 ~
「────悲しいことに、か。 なに、心配するな。変わり者などこの国はごまんといる、きっと楽しく生きれるさ、それがこの国だ」~
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「……色々と急すぎてよくわかんないですけど、よろしくお願いします……」~
 ~
 唐突な介入により、ある変わった魔神は新たな生活を手にする事となった。~
 なお、シーダ週休2日制(完全ではない)である事に気づくのは数日後であった。ちなみに、月残業時間は80時間を超えた。~
 ~
「やっぱり詐欺だ!!!!!!!」~

~

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