#author("2022-08-09T00:10:46+09:00","","")
#author("2022-08-09T00:11:36+09:00","","")
* ファンス=ドレムの訪問 [#p3cdfbdf]

「アイリスって案外世話焼きなんだねぇ。ほっとくと飯すらすっぽかすネイロはともかく、はるか遠くの国のお嬢様にまで……まぁ気持ちはわかるけど。あんなもの視ちゃったら、ねぇ」~
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 学園都市、外縁高速道。蝙蝠のような姿をした小さな&ruby(ファミリア){使い魔};が、街灯の上から夜の学園を見下ろしていた。~
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「……猫だとなんかやたら被るからこっちにして来たけどやっぱり暗視ないの不便~。ファミリア猫に慣らされすぎたとも言う」~
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 使い魔の主はアユと言う。妖精の古代種たるフィーにして、智慧の果実を口にせし者。全てを知る権利を使ったり使わなかったりする、一陣のそよ風。~
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「いやーしかし、本能には逆らえないねぇ。本当は前に一人であんな無茶したアイリスがまたどっか行くって言うから心配で様子見に来たんだけど」~
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 学園とは、未来ある若人たちの集う都。それぞれが輝いていて、それらが出会えば物語になる。そして彼女はフィー、物語の蒐集者。きらきら輝く宝石箱を前にして、心躍らぬわけがなかった。~
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 一族を殺され、それでも前を向いて歩くのを止めない歌人。~
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 若さゆえか、遊びも復讐も真剣に打ち込む魔神使いの剣士。~
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 子供にもなれぬまま、自身に大人であることを強いる秘奥と戦勝の魔法使い。~
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 可変の価値に魅入られ、自らさえも市場に売り出す錬金術師。~
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 蒙昧ゆえに推進力に満ちた知力3の戦士。~
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 寝食も忘れて手伝いに没頭する見習い占い師。~
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 目先の詐金に囚われず真の叛逆を目論む火吹き神官。~
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 万物に発勁を見出し、発勁に万物を見出す魔動発勁士。~
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 ひたむきに知恵と力を追求する、心優しき魔動戦士。~
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「――そして、それを教え導く師もまた、観測者ではいられない。あたしだってそうだったのだから」~
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 常に生徒を導く範たらんとする真面目な騎射手。~
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 襟は崩しても姿勢は崩さぬ機甲神像の拳闘士。~
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 悪びれずとも筋は通す、淫行教師の魔導使い。~
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「皆が可能性に満ちている。この街は物語に満ちている。何一つ見逃したくないけど、やっぱり特に気になるのは……」~
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 自分の中の狂った物差しを自覚してしまった魔法戦士。別に妖精魔法を扱うからという訳ではない。狂った物差しを自覚してしまったがゆえか、何にでもその物差しをあてようとする様がたまらなく面白くて。面白いんだけど、まだ少し物足りない所があって。それは……~
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「……それだけの熱量があるのに、自分から動かないのは少し勿体ないよ。自分を観測者だと思っているから?それとも、『少年』を失ったことをまだ引きずってるのかな」~
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「見るだけが物語じゃない。せっかく自分の身体があって、同じ世界に生きてるんだから。物語に立ち会って、参加して、盛り上げていこうよ」~
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 アカシックレコードを読んでも未来のことは分からない。たとえ分かったとしても、見ているだけより立ち会って、一緒に参加した方が楽しいし面白い。これは彼女が、&ruby(アルくん){生涯の英雄};に学んだことだ。~
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「……具体的に先生はどうすればいいのって聞かれたら、困るけど」~
「……具体的に先生はどうすればいいのって聞かれたら、ちょっと困るけどね?」~
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 使い魔はその翼で目を擦った。まるで『街灯が眩しくてここでは寝られない』と抗議するかのように。~
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「そうだね、そろそろ寝ようか。身の安全はちゃんと確保するんだよ~、ファンス=ドレム」~
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 大妖精は使い魔に、自分より長い名前を付けていた。~
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[[tales]]

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